「仲間と一緒に見ることができて、貴重な経験ができた」
 ——病室からアバターロボットを操作して、ドクターヘリを見学した生徒の言葉です。

病状や体力面、治療による行動の制限で、現地に出向けない。そんな制約を抱えた入院中の生徒が、病室にいながらドクターヘリのそばまで「行き」、医療スタッフに直接質問して学ぶ。福島県立須賀川支援学校医大校では、アバターロボットを活用した遠隔見学で、それを実現しました。

本記事では、総合的な学習の時間における職業調べとして行われた見学の様子を、当日の流れと担当教員の声からご紹介します。
※本記事は、旧モデル「kubi」を使用した導入事例です。

1. 導入の背景──病弱支援学校が抱える「体験学習に参加が困難」という課題

福島県立須賀川支援学校医大校は、福島県立医科大学附属病院内に設置された病弱特別支援学校です。小学部と中学部があり、入院中の子どもたちが学んでいます。

入院期間や学習方法は一人ひとり異なるため、対面とオンラインでの形態を工夫しながら、学校生活がより良いものになるよう努めてきました。

そうした環境で課題になっていたのが、体験学習への参加です。
病状や体力面、治療による行動の制限から、現地での見学活動にどうしても参加できない生徒が出てしまう。教室の学びはオンラインで届けられても、現場に立つ体験を工夫していきたい——ここが、遠隔参加型ロボット活用の出発点になりました。

そこで今回、総合的な学習の時間における職業調べの一環として行う、ドクターカー・ドクターヘリ・ドクターヘリ通信センターの見学に、アバターロボットを導入しました。

2. 使用した機器とアプリ

今回は「職業調べ」の授業として、在籍している中学生を対象に、病院のドクターカー・ドクターヘリ・ドクターヘリ通信センターを見学し、現場の職員の方々に質問して学ぶという内容で実施しました。現地に出向けない生徒が、病室からリアルタイムでロボットを操作しながら参加する形です。

項目

内容

目的

総合的な学習の時間における職業調べ

利用者

在籍している中学生

現地の機器

kubi(首振り型・iPadスタンド)、temi(移動型ロボット)、iPad、ポケットWi-Fi

病室の機器

パソコン、iPad

アプリ

AvatarLink

見学場所や目的に応じて、定点でじっくり見たい場面ではkubi、その場を移動しながら見て回りたい場面ではtemi、という形で使い分けられました。kubiは首振り機能でカメラの向きを自在に変えられるため、生徒が「自分の意思で見たいところを見る」感覚を得やすいのが特徴です。

アバターロボットの仕組みについては、「アバターロボットの国内動向まとめ」もあわせてご覧ください。

3. 当日の様子──病室から、生徒が自分でカメラを動かした

▼ドクターカー見学:kubiの首振りで車内を見回す
ドクターカー見学:kubiの首振りで車内を見回す
ドクターカーの車内にkubiを設置し、生徒が病室からパソコンを操作して車内を見回しました。首振り機能でカメラの向きを自由に変えられるため、気になるところを見たり、話している人を見たりすることができます。

一方的に流れてくる映像を見せられるのではなく、生徒自身が「どこを見るか」を選べる。実際に体験した生徒からも『車内が意外と広くて驚いた』と感動の声もいただいています。

▼ドクターヘリ見学:temiでヘリのそばまで「移動」
ドクターカー見学:kubiの首振りで車内を見回す

続くドクターヘリ見学では、職員の案内の流れに沿って、生徒が病室からパソコンを操作して、temiでドクターヘリのところまで自走させて向かいました。生徒が質問すると、職員の方々はtemiに向かって話してくださいました。病室にいながらも、まるでその場にいるような感覚で見学が進み、「今度は実際に見てみたい」という声をもらっています。

4. 導入効果──「双方向のやりとり」が体験の質を変えた

病状や体力面、治療による行動の制限があって現地で見学できない生徒においても、現地で参加できた生徒と目的、気持ちを共にして病室にいながらロボットを操作することにより、臨場感を味わいながら見学をしたり、説明を聞きながら質問したりすることができました。

今回の見学は、ドクターカー・ドクターヘリ・ドクターヘリ通信センターという、医大附属病院内に設置された医大校だからこそ実現できた内容でした。

5. 実施にあたって工夫したこと

事例づくりで事前に気をつけたことは、kubiやtemiの操作を、生徒と教師で練習したこと。当日ロボットの動かし方に戸惑っていると体験の質が下がるため、操作に慣れておくことは重要です。

また、見学場所を教員が病院関係者と一緒に事前に確認したり、病院関係者にkubiやtemiを実際に見てもらったりしていました。接続確認と動作確認を複数の教員で行って、当日に備えておりました。

6. まとめ──入院中でも、仲間と同じ体験ができる

今回の事例では、入院している生徒が自分の手で操作でき、医療施設の現場の仕事の雰囲気をリモートでも感じることができました。ドクターカーやドクターヘリ、ドクターヘリ通信センターの見学は、生徒にとって医大校に在籍していて、アバターロボットを効果的に活用していたからこそできた貴重な経験になりました。

インタビューにご協力いただきました、福島県立須賀川支援学校医大校の皆さま、ありがとうございました。

取材先
福島県立須賀川支援学校医大校

福島県立医科大学附属病院内に設置された、福島県立須賀川支援学校の分校です。小学部・中学部があり、入院中の児童生徒が学んでいます。地域支援センター「きらら」を通じた教育相談・学習支援、高校生支援にも取り組んでいます。

所在地:〒960-1247 福島県福島市光が丘1番地 県立医科大学附属病院内

公式サイト:https://sukagawa-sh-idai.fcs.ed.jp/

モデル事例企画・開発
一般財団法人ニューメディア開発協会

一般財団法人ニューメディア開発協会(NMDA)は、2020年度より、入院中の子どもたちがアバターを活用して学校生活(授業や交流)に参加する支援事業に取り組んでいます。同協会が2022年度JKA補助事業により運営する「アバター学校生活参加支援コミュニティ」では、全国の学校におけるアバター・テレプレゼンスロボットの利用事例が公開されています。

アバター学校生活参加支援コミュニティ:https://avatar-tele-edu.com/

一般財団法人ニューメディア開発協会:https://www.nmda.or.jp/

福島県立須賀川支援学校医大校様の事例URL:詳細はこちら

本記事で使用したアバターロボット

kubi (iPresence株式会社)

タブレット端末を載せて、遠隔から上下左右に首を振れるアバターロボットです。操作する側が「自分の意思で見たい方向を見る」ことができるため、一方向の映像配信とは異なる参加体験を実現します。
2026年10月発売の「kubi 2.0」では、本事例で活用されたテレプレゼンス機能に加え、AIエージェント機能などを搭載しています。詳しくはkubi 2.0製品ページをご覧ください。

kubi 2.0 製品ページはこちら

導入のご相談・お見積もり、実機のリモート体験は、お問い合わせフォーム(購入・お見積りのご相談)からお気軽にご連絡ください。

temi

廊下や屋外を自律走行できる移動型ロボットです。kubiと同じアプリで運用でき、「その場を移動しながら見る」用途を担います。

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