■株式会社共和電業・株式会社山形共和電業
 株式会社共和電業は、ひずみゲージのパイオニアとして、計測・制御・解析の分野で産業と学術の進歩を支えてきました。本社を東京都調布市に構え、資本金17億円、売上高は連結149億円、従業員数541名(2025年6月24日現在、同社ホームページより)。東証スタンダード市場に上場しており、国内外の研究開発・生産現場から厚い信頼を集めています。
 株式会社山形共和電業は、応力測定機器の総合メーカとして国内トップのシェアを持つ株式会社共和電業のファミリー会社であり、ひずみゲージおよびセンサの生産拠点となっています。

利用方法:工場のtemiで、本社から遠隔巡回して、相互理解を促進

本社(東京都調布市)にいる設計担当者が、テレプレゼンスアバターロボット「temi(テミ)」(以下、temi)のテレビ電話機能と遠隔操作移動機能を通じて生産拠点(山形)内を遠隔で巡回し、作業環境の確認や現場スタッフとのリアルタイムな対話、会議参加を行うことで、設計と製造の理解ギャップを埋める取り組みが進められている。

製造現場との“心理的距離”をどう縮めるか?

製造業における「良いものづくり」は、優れた設計や生産技術だけで実現するものではない。本社と生産拠点、設計と現場、部門と部門のあいだに築かれる“関係性の質”こそが、製品の完成度やチーム全体の力を左右する。株式会社共和電業では、そうした目に見えない「つながり」に着目し、「拠点・部門間の距離を縮めたい」という思いのもと、temiの導入に踏み切った。

導入の背景:情報共有だけでは伝わらない“現場の空気”

本社を東京都調布市に置き、拠点の1つとして山形県に生産拠点を構える共和電業では、これまでも拠点間の連携強化に向けて様々な取り組みを行ってきた。月1回のテレビ会議や現地訪問などを通じて一定の情報共有は図られていたが、そうした手段だけでは、製造現場の“実際の業務フロー”、“空気感”の共有、“ちょっとした違和感”といった微細な現場の情報を把握するには限界があった。実際、「作業台の状況」「設備や作業ラインのレイアウト状況」といった本社からは見えない小さなズレが、コミュニケーションのすれ違いや摩擦を生むこともあった。

導入の決め手:temiで“現場を体感する”という新発想

こうした背景のもと、「現場をもっと日常的かつリアルタイムに“感じ取れる”手段はないか」と模索する中で導入されたのが、temiである。temiは、タブレット型の画面を持つ自律移動型のロボットで、遠隔操作によって生産拠点内を自由に移動し、リアルタイムで現場の様子を“自分の目線”で確認できる。設計者や管理者が調布本社からtemiを操作して生産現場を見て回り、タブレットの画面に自分の顔を出しながら現場スタッフに声をかけたり、ホワイトボードを確認したりすることで、あたかもその場に“訪れている”ような感覚を得ることができる。

“関係を築く存在”として受け入れられるtemi

「誰かが来ている」という感覚が生まれることで、現場の人たちも自然とtemiに手を振ったり、気軽に話しかけたりするようになる。これは、監視カメラのような「見られている」感覚とは異なり、“関係を築く存在”としてtemiが受け入れられている証でもある。生産拠点側の責任者からも「temiに顔を出している人が実際に現場で一緒に居る感覚で話している。そこに違和感はない。」と、対面と同じ体験が実現できていることを語っていただけた。過去に、監視カメラを増設することを検討されたこともあるが、生産拠点側に心理的抵抗が強くあることで却下された経緯もあり、双方が対等な関係を表現できるtemiだからこそ実現できたことだろう。

会議では拾えない“雑談”がtemiでは自然に生まれる

導入によって大きく変化したのは、コミュニケーションの質そのもので、会議室でのテレビ会議では難しかった雑談やちょっとした気づきの共有がtemi越しには自然と発生し、現場と設計のあいだにあった心理的な距離がぐっと縮まった。「会議アジェンダから外れた話題を、自然と話せるのがtemiならではのメリット」というコメントもあった。

今後の展望:設計部全体への展開と活用広がる可能性

現在はまだ、導入を主導したメンバーが中心となってtemiを活用している段階だが、担当者は「今後は設計部の他のメンバーにも広く使ってもらうことで、より良い方向に進んでいけるのではないか」と期待を語ってくれている。temiは、単なるツールではなく、設計部門全体の意識や現場への理解度を変えていく「相互理解の起点」として位置づけられつつある。

新たな活用:研修でも現場の魅力を伝える

また、temiの活用は広がりつつある。たとえば、新入社員研修では生産拠点の雰囲気をtemiでリアルタイムに見せることで、遠隔地にいても現場の魅力や働く環境を感じてもらえるようになった。担当者は、「temiを通じて先進的な企業イメージを伝えられることも大きなメリットだ」と話している。

まとめ:temiが再構築する“理解”と“関係性”

temiの存在が生むのは、単純な情報の伝達ではなく、“理解”と“関係性”の再構築である。本社と生産拠点、設計と現場。離れているはずのふたつの拠点が、temiを介して繋がり直すことで、製品の精度も、組織の一体感も、一段階深いところへと進化する可能性がある。共和電業におけるtemiの導入が、拠点間コミュニケーションのあり方を刷新し、「より良いものづくり」へと進む起爆剤になればと願う。