Semi-Real(セミリアル)とは何か?― 仮想と現実のあいだに生まれる、新しい“存在”のかたち ―
― 仮想と現実のあいだに生まれる、新しい“存在”のかたち ―
「つながる」は進化し、「そこにいる」へ。
― 物理的な距離を越えて、“存在”そのものを再構築するために。
現場から離れていても、「その場にいる」と感じられる時代へ
私たちはいま、あらゆる現場で「存在のしかた」を問い直す時代に生きています。
オフィスでの会議、工場での巡回、ショールームでの接客や観光案内――かつては「その場にいなければ成立しない」と考えられていたこれらの行動が、テクノロジーの進化によって大きく変わり始めています。
「リモートでの参加」「オンラインでの接続」という言葉は、もはや日常語になりました。しかし、それでもなお、“画面越しのつながり”はどこか心許なく、存在感が希薄だと感じることはないでしょうか?
そうした背景のなかで、iPresenceは2020年に新しい概念を提唱しました。
それが、Semi-Real(セミリアル)です。
この言葉は、「現実にそこにいる」という状態と、「完全に仮想の存在」である状態とのあいだに位置する、新しい“存在”のあり方を示しています。
Semi-Realとは、物理的にはその場にいないけれど、そこに“いるように”感じられる存在感の構築。
単なる情報通信の延長線上ではなく、感覚的にも、空間的にも、心理的にも「その人がそこにいる」と思える体験の再設計なのです。
この考え方は、オフィス、工場、ショールームといった「人が空間と関係しながら働く/交流する」あらゆる現場に、大きな可能性をもたらします。
Semi-Realとは何か?―定義と構成要素
Semi-Real(セミリアル)とは、iPresenceが2020年に提唱した造語です。
この言葉は、「semi(半分・部分的)」と「real(現実)」を組み合わせたもので、完全に“リアル”ではないが、明らかに“リアルに近い”体験や存在感を指します。
しかし、これは単なる直訳では語り尽くせません。
Semi-Realが指し示すのは、
リアルとバーチャルの境界を溶かし、両者を橋渡しする新しい“存在のレイヤー”です。
Semi-Realの定義
物理的にはその場にいなくても、“そこにいるかのような実感”を他者に与えられる状態、あるいはそう感じられる体験設計。
たとえば、遠隔操作ロボットで工場内を巡回したり、3Dスキャンされたショールームをバーチャルで“歩く”といった体験がこれにあたります。
単なるビデオ通話や監視映像とは異なり、空間の中で「能動的に存在する」感覚が再現されていることが、Semi-Realの重要なポイントです。
Semi-Realを構成する4つの要素
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空間の共有:自分がその場に「位置づけられている」という感覚を持てるか。
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双方向性(インタラクション):受動的な観察ではなく、能動的に関わることができるか。
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存在感の演出:周囲の人々が「あの人はそこにいる」と自然に感じられるか。
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物理的制約からの自由:距離や時間といった現実的な制限を乗り越えられるか。
これらの要素が重なり合うとき、Semi-Realな状態=「そこにいないのに、そこにいる」という逆説的で革新的な体験が実現します。
Semi-Realは現場でどう活きるのか?―オフィス・工場・ショールームの活用例
Semi-Realは抽象的な概念にとどまらず、すでに多くのリアルな現場で実装され、成果を上げているアプローチです。
ここでは、iPresenceが注力する三つの主要フィールド――オフィス、工場、ショールームにおけるSemi-Realの具体的な活用例を紹介します。
■ オフィス:管理職やキーパーソンの“存在”を遠隔で再現
現場での意思決定、部下との相談、チームマネジメント――これらの活動は、単なる情報のやりとりではなく、“その人がそこにいる”という存在感が不可欠です。
Semi-Realなテレプレゼンス技術を活用することで、離れた場所からでもロボットを通じてオフィス内を自走し、対話し、空間を共にすることができます。
●管理職がロボットを使って「突然訪問」し、部下と会話する
●在宅勤務者がオフィスでのランチ会に“参加”する
●離れた拠点同士の交流を“空間的に融合”させる
ただつながるだけでは生まれない、「そこにいる感覚」をチームにもたらす。これがSemi-Realの真価です。
■ 工場:遠隔からの臨場感ある現場確認・巡回
製造現場では、工程の進捗確認、安全確認、設備点検など、日々多くの“現場対応”が求められます。
しかし、すべてを物理的にこなすには、時間も人員もコストも膨大です。
Semi-Realなアプローチにより、遠隔からロボットを使って工場内を巡回し、現場スタッフとリアルタイムに対話することが可能になります。
●複数工場の管理者が、一日で複数拠点を“回る”
●遠方の技術者が、現場の様子を“その目で見て”アドバイスする
●海外拠点のオペレーションを“まるでその場にいるように”チェックする
視覚・空間・会話が重なった“現場感”が、Semi-Realによって再現されるのです。
■ ショールーム・観光施設:遠隔接客と“出会い”の演出
物理空間での案内や接客は、体験価値に直結します。
しかし人手不足や移動制約により、常時高品質な対応を維持することは困難です。
Semi-Realな接客では、遠隔地のスタッフがロボットを通じて来訪者と会話し、施設内を案内することができます。
視線の高さで対話ができ、空間を共有するように進む――これにより、単なる説明ではなく“出会いの記憶”を提供することができるのです。
●外国語対応スタッフが、リモートから複数施設を担当
●展示品にまつわるストーリーを、遠隔から語りかける
●人のいない時間帯でも、ロボットが動き、誰かが「いる」印象をつくる
観光や商業の場においても、“存在”の質が体験価値を左右する時代へと突入しています。
「つながる」から「いる」へ ― Semi-Realが生む心理的インパクト
多くの人が、リモートワークやビデオ通話を通して「つながっている」状態に慣れました。しかしその一方で、こんな感覚を抱いたことがあるはずです。
声は聞こえる。映像も映っている。
でも――「そこにいる」感じがしない。
これこそが、“つながり”だけでは補えない、心理的な存在感の欠如です。
Semi-Realが注目される理由は、技術的な新しさだけではなく、この「いる感覚」を再構築できる点にあります。
「そこにいる」という感覚がもたらす安心とつながり
Semi-Realは、ただ情報を伝えるのではなく、空間と感覚を共有し、“共にいる”と感じさせる体験を提供します。
この「いる感覚」が生まれると、心理的には次のようなポジティブな変化が起きます:
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安心感・信頼感の向上: 顔を合わせ、空間を共有することで、見守られているという安心感が生まれます。
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チームワーク・共創の促進:「共に場をつくっている」感覚が、より主体的な協働姿勢を生み出します。
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孤立感の軽減:特に在宅勤務者や拠点の少人数スタッフにとって、「誰かがそばにいる」という印象は大きな支えになります。
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接客・案内におけるホスピタリティの再現:「接客されている感」が増すことで、顧客満足度や施設の印象が向上します。
「つながる」は進化し、「そこにいる」へ
この言葉は、Semi-Realの本質を端的に言い表しています。
“つながる”という細く不安定な線が、“そこにいる”という太く確かな存在感に変わったとき、人はようやく本当の意味で「安心して関わる」ことができるのです。
そして、そうした感覚こそが、これからの遠隔コミュニケーションやハイブリッドワークの質を決定づける要素になると、私たちは考えています。
Semi-Realがつくる未来と、その先へ
Semi-Realとは、単なる“便利な遠隔操作”でも、“臨場感のある通信技術”でもありません。
それは、人がそこに「いる」と感じること、そして「存在する」ことを再定義する試みです。
オフィスでは、離れた管理職が「そばにいてくれる」感覚を。
工場では、複数拠点の現場にリアルタイムで“訪れる”力を。
ショールームや観光施設では、遠くからでも「人と出会う」喜びを。
こうした場面のすべてにおいて、Semi-Realは物理的制約にとらわれず、空間と感情のつながりを回復・強化する技術と思想です。
「つながる」は進化し、「そこにいる」へ。
この言葉が象徴するように、私たちの働き方や暮らし方は、今後ますます“存在感”の再構築へと向かっていきます。
しかし、iPresenceが本当に目指しているのは、その先にあります。
「そこにいる」さえも超える、その先の“存在体験”へ
Semi-Realが実現するのは、物理的な距離を越えて「そこにいる」と感じられること。
けれど、未来にはそのさらに先――“いなくても、確かに関わっている”と感じられる存在のかたちが求められるはずです。
たとえば、
●自分が操作していなくても、自律的に現場と関わるロボット
●物理空間とデジタル空間が融合し、どちらにいても同等の影響力を持てる環境
●感情や意図までをも共有できる遠隔コミュニケーション
そうした次世代の存在体験を、iPresenceは“その場の空気ごと届ける”ような技術・設計で実現しようとしています。
Semi-Realは、未来の「存在のあり方」への第一歩。
そして、それをどう設計し、どう使い、どう社会に根づかせるかは、いま私たちが問うべきテーマなのです。
まとめ
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Semi-Realは、iPresenceが提唱する新しい存在感覚の概念であり、物理的に“いなくても”、その場に“いるように感じられる”状態を実現する。
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「つながる」だけでは生まれない、安心・信頼・共感・記憶が、Semi-Realによって再構築される。
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そしてiPresenceは、「そこにいる」さえも超える存在のあり方を、これからも問い続け、形にしていく。