製造現場の遠隔対面指導:temiを活用したライン作業者の遠隔作業支援システム
遠隔作業支援の重要性と課題
製造現場の世界では、生産性の向上と品質の確保が常に最重要課題です。しかし、これを達成するためのライン作業者への指導は、特に遠隔地からとなると多くの課題が伴います。この記事では、アバターロボットtemiを用いた遠隔対面指導がどのようにしてこれらの課題を解決するかを探ります。
現状のライン作業指導の課題
現場でのライン作業指導は、製品の品質と生産性を直接左右する重要なプロセスです。しかし、伝統的な対面指導にはいくつかの課題があります。
指導するための人的リソースの不足
例えば、工場長や専門インストラクターが物理的に現場にいる必要があり、これが時間とコストを消費します。年々指導ができる人材が不足しているという問題もあります。また、大規模な工場や複数の拠点を持つ企業では、全員に一貫した指導を行うのが難しくなります。さらに、大規模な工場では作業者と指導者の心理的距離が離れているため、コミュニケーションや理解力に課題が生じることもあります。また指導者は遠隔地の現場への出張が多発することで、移動時間や移動コストがかかる上に、本来の業務も同時に行わないといけないため、生産性の低下を招く可能性があります。
限られたリソースで効果的な指導を行うための解決策を見つけることが求められています。
現状の遠隔作業支援・遠隔対面指導の課題
対面指導は、作業者と指導者が同じ場所にいることでコミュニケーションが円滑に行われ、細かい動きや表情も把握しやすいため、より効率的な指導が可能です。近年では、テクノロジーの発達によりリアルタイムでの遠隔による指導や作業支援が可能となってきました。しかし、そこにはいくつかの課題がありました。
指導者が正確にかつスムーズに、作業部位や作業方法を説明することが難しい
スマートフォンを用いたビデオ通話の場合:
作業者が両手を使っているため、自分の手元や周りの環境を映せず、指導者は作業内容を正確に把握することができません。また、作業者側も指示やアドバイスを受け取るために常にスマートフォンを見なければならず、作業効率が低下します。指導者と作業者の間で専門用語という共通言語が使えないため、あれ・これ・そこのといった言葉で説明をしないといけないため、正確にかつスムーズに指導することが難しい場面があります。
カメラ付きヘッドセットを利用したビデオ通話の場合:
手元や周りの環境を映せますが、ヘッドセットをつけながら作業することは困難であり、作業効率も低下します。指導者の元には、現場の映像が伝わりますが、作業者の元には音声しか届かず、正確にかつスムーズに指導することが難しい場合が同様にあります。
指導者に状況説明する際に、片手が塞がってしまうことがある
作業者側がスマートフォンなどを使用する場合、指示やアドバイスを受け取るために常に片手が塞がってしまいます。これは不便なだけでなく、作業効率の低下にもつながります。
指導者と作業者の間で、信頼関係を築くことが難しい
今までの遠隔指導は、作業方法を伝えたりすることはできますが、作業者と指導者の距離があるため、教育的なアドバイスやフィードバックを行うことが難しい場合もあります。映像越し、音声越しだけではコミュニケーションを通じた信頼関係を築くことが難しく、作業者の理解力やモチベーションに影響を与える可能性があります。
temiが実現する現場での遠隔作業支援 / 対面指導の仕組み
そこで注目されているのが、テレプレゼンスアバターロボット(以下テレロボ)を用いた遠隔作業支援といった遠隔の擬似対面指導です。テレロボを遠隔操作することで、現場にいるかのような感覚でリアルタイムでの指導や作業支援が可能となります。
temiのテレビ電話ロボ機能
テレロボ temi は、柔軟性を兼ね備えた次世代型人型移動ロボットです。13.3インチのモニターを搭載した親しみやすい姿で、代表的な機能として「自動説明ロボ機能」と「テレビ電話ロボ機能」を備えています。
遠隔地にいる指導者がまるで現場にいるかのようにコミュニケーションを取ることができるのが、temiのテレビ電話ロボ機能です。指導者はtemiのモニター上部に備え付けられているカメラから送られてくる映像と音声が届く、テレビ電話を通じて現場の状況を視覚的に確認しながら指導を行うことが可能です。話しながらテレロボを遠隔操作して自在に現場現場で動き回ることも可能です。
ライン作業の遠隔作業支援 / 対面指導におけるtemiのメリット
円滑なコミュニケーションと生産性向上
指導者は正確にかつスムーズに、作業部位や作業方法を作業者に伝えることができ、指導内容の理解度が高まり、作業の精度が向上します。音声とビデオ通話を組み合わせることで、指導者は作業者とのリアルタイムの対話が可能になり、誤解を防ぎます。
作業者の両手が自由であり、自然な姿勢で作業ができる
作業者はスマートフォンなどを使用しなくても、temiが自動的に映像や音声を伝えるため、両手が自由となり、より自然な姿勢で作業を行うことができます。
指導者と作業者の間に信頼関係を築ける
テレロボを使用することで、指導者と作業者の心理的距離感が近くなり、よりリアルな対面指導を行うことができます。また声がけや雑談も交えて、信頼関係を築くことができ、教育的なアドバイスやフィードバックもより効果的に行うことができます。
コストと時間の節約
遠隔指導により、物理的な移動が不要となり、コストと時間を大幅に節約することができます。また、遠隔地からでも迅速に問題解決が行えるため、生産の中断を最小限に抑えることができます。
これらを解決するツールとして、テレロボ temi が活用されることで、遠隔作業支援 / 対面指導の生産性向上が期待されます。さらに、リアルタイムでのアドバイスやフィードバックを行うことも可能です。
temiの「テレビ電話機能」を用いた遠隔作業支援 / 対面指導の流れ
現場にテレロボtemiを配置します。対象の作業者はtemiのモニター上部にあるカメラから映像と音声を受け取るため、特別な準備や機器が必要ありません。
指導者はPCからのブラウザ操作で、ロボットtemiの管理と操作設定ができるtemi centerへログインします。スマートフォンからは専用のアプリを起動して繋げます。呼び出したいtemiを選択して、電話をすれば自動的に現場とテレビ電話が繋がります。
- 遠隔地の指導者がtemiを操作して、現場とテレビ電話で繋がります。
- テレロボ temi のカメラから送られてくる映像と音声が届き、現場の状況を確認します。
- 指示やアドバイスを行いながら、作業者は自由に作業することが可能です。
- temiの遠隔操作で周辺情報を移動しながら、作業者と会話をしながら、カメラの位置を遠隔で微調整します。
- 指導者が作業者に対応すべき動作を実演して見せるか、PCから接続している場合は、temiセンターをパソコンで開いている全画面や、Chromeタブからtemiの画面に表示したいものを選んで共有できます。
- 作業完了後、temiを操作して電話を切ります。指導者はtemi centerからログアウトします。
以上の流れで、現場と指導者の間においてもリアルタイムでのコミュニケーションやフィードバックが行えるため、効率的な遠隔作業支援 / 対面指導が実現できます。
的確な作業指示は、良い人間関係から
トヨタ自動車北海道では下記の記事によると、自動車に欠かせない部品を製造しており、グループ長の下にいるリーダーがチームのメンバーに直接指示を出し進捗を確認しています。チームの人数は、リーダーが一人ひとりと直接コミュニケーションを取って作業を進められるよう10人以下で編成され、2〜3チームが一つのグループになり、作業改善を常に行なっています。
継続的な作業改善や指導に必要なのは、円滑なコミュニケーションです。そのために、トヨタでは良い人間関係に支えられた明るい職場づくりが不可欠と考えています。
作業伝達には人間関係が必須|この標準作業と改善のサイクルを回していくために必要なのは、円滑なコミュニケーションです。そのために、トヨタでは良い人間関係に支えられた明るい職場づくりが不可欠と考えています。メンバーには正社員だけでなく期間社員や派遣社員もいるため、多様な価値観を持つ人とのコミュニケーションが求められます。 作業指示を出すリーダーやグループ長には、各課の係長にあたる工長がトレーナーとなって研修を行います。講義だけでなく体験型の研修で、より深く理解できるようにしています。
これらのことから、遠隔作業支援や対面指導においても、指導者が正確かつスムーズに作業部位や作業方法を説明できること、そして指導者と作業者の間に信頼関係を築く体制があることが、継続的な作業改善や支援に必要であることが分かります。
「まるでそこにいる」 temiの存在感が、信頼関係を築く
temiは高さ100cm、13.3インチのモニターには、指導者の顔が写り遠隔作業支援・対面指導であっても、まるでその場にその人がいるかのような安心感と、親近感を感じることができます。そのため、作業者は遠隔の指導者ともリアルタイムでコミュニケーションを取りながら作業することができるため、よりスムーズに作業を進めることができます。
また、temiの存在感やリアルタイム性は作業者に対する信頼感を高めるため、指導者と作業者間で良好な人間関係を築くことができます。これにより、継続的な作業改善や支援を行う上で必要不可欠な信頼関係を構築することができるのです。
このように、テレビ電話機能を用いた現地会議参加では、現場と遠隔地の参加者がリアルタイムでコミュニケーションを取りながら、効率的に現場の視察や議論を行うことができます。