現代の製造業界では、工場の安全性と効率性を向上させるために最新技術とスマートファクトリー実現が求められています。その中でも、声掛けが可能な遠隔巡視システムが注目されています。この記事では、工場の管理者や部門長に向けて、遠隔巡視の重要性、声掛け機能、効率的な巡回巡視の方法、コスト削減の効果、安全性と効率性の向上について詳しく解説します。
工場の巡回巡視とは
工場の巡回巡視とは、設備環境や機械の状況を定期的に確認することで、事故やトラブルや設備稼働停止(チョコ停・ドカ停)を未然に防ぐための作業です。これは、製造業界では欠かせない重要な業務であり、定期的に行われることが求められています。
巡回と巡視の違いは、巡回は点検や保守を行うための作業であるのに対し、巡視が監視を目的とした作業という点です。しかし、どちらも工場内の安全性や生産性を確保する上で欠かせない作業であり、正確かつ効率的に行うことが重要です。
現状の工場巡視の課題
製造現場における巡回や監視は、作業進捗の確認や設備の状態確認、作業者の安全確保など事故を未然に防ぐ重要な役割を担っています。しかし、従来の方法では問題があります。
時間とコスト
工場長、事業所長などのトップや現場主任や外部の専門家などの人が日に3回、週に1回、月に1回などそれぞれの立場によって様々な頻度で巡視を行います。現場に常にいる人であれば問題ありませんが、突発的な出張が頻発する方や遠方の本社勤務、外部の専門家の場合は、移動するための時間とコストがかかり、スケジュール調整が難しい場合もあります。
時間的制約と安全上の懸念
従来の巡回巡視方法では、作業者が実際に現場を歩きながらチェックを行う必要があります。しかし、この方法では時間がかかり、全ての場所をチェックすることが難しいです。また、限られた時間内で巡回を行うため、重要な点を見逃してしまうリスクもあります。安全上の懸念を解消するためには、効率的で迅速な監視方法が求められます。
限られたリソースで効果的な巡視を行うための解決策を見つけることが求められています。
現状の遠隔巡視サービス、巡回ロボットの課題
施設内の人が、「監視されている」と感じるサービスが導入
従来の遠隔巡視サービスでは、監視カメラを設置し、リアルタイムで現場を監視することが一般的です。また巡回ロボットでは、自動でプログラミングされた内容で動いているか、もしくは誰かが遠隔から操作している場合がありますが、操作者の顔が現地では見えないことが多いです。しかし、これらの方法では、作業者が自分の行動や作業が常に監視されている、誰から監視されているか分からないと感じることで、抵抗感やストレスを感じる場合もあります。
親しみやすさ、コミュニケーションの構築が念頭にないサービスが多い
警備を目的とした巡回ロボットでは不審物や不審者を警戒する目的が主のため、警戒心を抱かせるようなフォルムのものが多いです。また、監視カメラタイプの場合、作業者とのリアルタイムなやりとりができる機能が限られており、対面に近いコミュニケーションを取ることが難しい場合もあります。
声掛け機能がない場合も多い
遠隔巡視サービスによっては、監視カメラを設置しているものの、声掛け機能が備わっていない場合が多くあります。未然の事故を防止したり、安全意識を高めるためにも現場の士気を高めるために褒めたり、注意を促したり、緊急時に対応するためには、リアルタイムで声をかけることが重要です。
テレロボtemiが実現する現場での遠隔巡視 の仕組み
そこで注目されているのが、テレプレゼンスアバターロボット(以下テレロボ)を用いた遠隔巡視です。テレロボを遠隔操作することで、現場にいるかのような感覚でリアルタイムで巡回し、作業者や設備状況を確認することが可能になります。今回はtemi(テミ)というテレロボをご紹介します。
temiのテレビ電話ロボ機能
テレロボ temi は、柔軟性を兼ね備えた次世代型人型移動ロボットです。13.3インチのモニターを搭載した親しみやすい姿で、代表的な機能として「自動説明ロボ機能」と「テレビ電話ロボ機能」を備えています。
遠隔地にいる巡視者がまるで現場にいるかのようにコミュニケーションを取ることができるのが、temiのテレビ電話ロボ機能です。巡視者はtemiのモニター上部に備え付けられているカメラから送られてくる映像と音声が届く、テレビ電話を通じて現場の状況を視覚的に確認しながら指導を行うことが可能です。話しながらテレロボを遠隔操作して自在に現場現場で動き回ることも可能です。
工場の遠隔巡視 におけるtemiの5つの利点
- 思いを伝える声がけと対話が可能な、巡回巡視中のコミュニケーション
temiを使用することで、遠隔地の指導者が現場の作業者と直接会話できるため、迅速なフィードバックや指示が可能です。これにより、作業の進捗をリアルタイムで把握し、改善が必要な点を即座に指摘できます。設備の異常を検知した際、遠隔から作業者に直接指示を送ることで、迅速な修正が実現できます。これにより、重大な事故を未然に防ぐことができます。 - 遠隔でも正確な巡回巡視、柔軟な移動能力
temiは人型移動ロボットであるため、工場内を自由に移動することができ、複数のエリアを効率的に遠隔巡視ができます。また重要な巡視ポイントをクラウド上の地図に登録して、クリックをするだけで次の巡視ポイントへ自動で移動することができます。作業者がアクセスしにくい場所や限られた時間内では見逃す可能性のある重要な箇所も、temiを使えばしっかり確認することができます。作業者が巡回するよりも迅速かつ正確に巡視を行うことができます。 - 目視点検が可能な、視覚的な状況把握力
13.3インチのモニターを通じて、映像と音声で現場の状態を確認できるため、日常的な遠隔目視が可能です。問題が発生した場合にその場で対応策を考えやすくなります。 - 顔が見えて 「まるでそこにいる」 存在感
temiは遠隔操作者の顔が画面上に表示されるため、誰が現場の見回りに来ているのかも分かります。遠隔巡視の際に、現場のスタッフに声を掛けることで、一方的に監視されていると思わせるのではなく、互いの信頼関係を築くことができます。 直接的なコミュニケーションとリアルタイムでのフィードバックにより、作業者のモチベーションや安心感が向上します。安全意識の向上にも寄与し、作業環境がより良いものになります。 - コストの削減
従来の巡回方法と比べて、移動時間やコストを大幅に削減できます。外部の専門家や本社勤務者が頻繁に工場へ移動する必要がなくなり、交通費や宿泊費などのコストを削減することができるほか、作業者の危険を伴う巡回も不要になるため、安全面でもコスト削減効果があります。
このように、temiを用いた遠隔巡視は、工場の安全性や生産性向上に大きく貢献します。
temiの「テレビ電話機能」を用いた遠隔巡視の流れ
現場にテレロボtemiを配置します。対象の作業者はtemiのモニター上部にあるカメラから映像と音声を受け取るため、特別な準備や機器が必要ありません。
指導者はPCからのブラウザ操作で、ロボットtemiの管理と操作設定ができるtemi centerへログインします。スマートフォンからは専用のアプリを起動して繋げます。呼び出したいtemiを選択して、電話をすれば自動的に現場とテレビ電話が繋がります。
- 遠隔地の指導者がtemiを操作して、現場とテレビ電話で繋がります。
- テレロボ temi のカメラから送られてくる映像と音声が届き、現場の状況を確認します。必要に応じて、音声や文字で指示を出すことができます。
- 現場の作業者もtemiのモニター上部にあるカメラを使って、遠隔地の指導者と顔を合わせながらコミュニケーションを取ります。また、作業中の様子や気づいたことを報告することができます。
- 指導者はtemiを操作して工場内を移動します。作業者と一緒に作業スペースを確認したり、機器の操作方法を直接教えたりすることができます。
- 遠隔巡視が終わったら、指導者はtemiを元の場所に戻し、テレビ電話機能を終了します。
このように、テレビ電話機能を用いた遠隔巡視では、現場と遠隔地の指導者がリアルタイムでコミュニケーションを取りながら、効率的に巡視を行うことができます。
効果的な遠隔巡視は、良い人間関係から
トヨタ自動車のインタビュー記事によると、トヨタ自動車の多くの管理者が工場内巡視の際に気をつけているのは、目の届きにくい所で働いている部下ほど忘れずにねぎらいの言葉を掛けることです。部下の顔を見れば細かい指示や問題点の指摘を繰り返すような管理者では、巡回行動で会うたびに部下から「またケチをつけに来た」と思われてしまいます。
優秀な管理者は、職場がうまく回っている時、すなわち通常時において、部下に細かくやるべきことを指示したり、悪い点ばかりを指摘したりするような巡回行動は取りません。それらをすべきなのは、トラブルが発生した時など緊急事態の場合。しかし、通常の巡回行動では、部下をねぎらい、励ますことが基本となります。 「よくやってるな」「大変だけど頑張ってくれ」などといった言葉を掛けて部下を励ます。部下が取り組んでいる仕事に興味を示す。仕事がより楽しく、楽になるように指導する。こうした巡回行動を取ると、「自分の仕事に関心を持ってもらった」「認めてもらえた」と感じて部下の士気は高まるのです。
これらから遠隔巡視も、信頼関係やコミュニケーションが重要です。遠隔巡視や点検ができるだけではなく、現場の作業者と遠隔地の指導者の間で、良好な人間関係を築くことで、安全意識が向上し、生産性や作業環境の改善につながることが期待されます。
まとめ
以上のように、テレビ電話機能を用いた遠隔巡視は、単に監視や目視点検するだけでなく、現場と指導者がリアルタイムでコミュニケーションを取り合うことで、作業効率や安全性の向上に大きく貢献します。また、良好な人間関係を築くことで作業者のモチベーションや安心感が向上し、作業環境の改善にもつながります。