テレプレゼンスAIロボット「temi(テミ)」でのPoC
temiを導入するかどうかを判断するとき、「まず試したい」という考えは自然なものです。ロボットは、現場に置いて初めて価値が立ち上がるデバイスであり、書類や説明だけで効果を読み取ることは困難です。業務フロー、空間構造、スタッフの動き、ネットワーク環境。これらの要素は現場ごとに異なるため、導入前に見える情報には限界があり、実際に動かした瞬間に初めて気づくことが圧倒的に多いのが実情です。だからこそ、temiはPoC(実証)というプロセスを適切に活用することで、最小コストで最短の判断を行いやすくなります。本記事では、temiでのPoCを実施する際にどのような考え方を持ち、どの段階を選べば良いかを明確にし、企業が迷わず進められるように整理していきます。
1. PoCとは何か
PoC(Proof of Concept)は、“本格導入に進む前に、小さく実験する”ための工程です。設備投資を伴うテクノロジー導入では一般的に使われており、ロボット導入との相性は特に良いといえます。PoCの目的は、いきなり高額な設備を購入するのではなく、現場で小さく試し、本当に効果が出る場面はどこか、どの部分が課題になるかを確かめることにあります。temiはその特性上、「存在感」や「動線との相性」「アナウンスの聞こえやすさ」「遠隔通話の見え方やスムーズさ」「ネットワークとの相性」といった、資料では測れない要素が価値の大部分を占めます。同じロボットでも、現場が変われば印象も結果も大きく変わるため、PoCは“ミスマッチを防ぐための最短ルート”として機能します。
2. なぜtemiではPoCが導入判断の“最短ルート”になるのか
ロボット導入は、机上の資料では判断材料が不足しがちです。temiは“体験によって価値が決まる”要素が多く、会議室で検討しても答えが出にくい領域を多く含んでいます。たとえば、アナウンスがどれくらい聞こえるのか、遠隔通話の画角や音質が自社の用途に合うのか、スタッフや来客の反応はどうか、混雑時に動けるのか、動線をどの程度自律移動できるのか。Wi-Fi環境で安定するのか、SIMとの併用が必要か。これらは、実際に動かしてみない限り分かりません。現場で試すことで、使える場面と使いづらい場面が一気に明確になり、本導入後の姿が掴めるようになります。その意味でPoCは、遠回りではなく、むしろ本導入に至る最も確実で最短のプロセスだといえます。
主な検証項目
・移動の可否(段差や傾斜、地図範囲)
・アナウンスの聞こえやすさ
・遠隔通話の音質、画角
・お客様やスタッフの反応
・混雑時の動きやすさ
・Wi-Fiの相性
・案内動線とのマッチ
・業務フローに馴染むかどうか
3. まず自社がどの段階かを判断する
temiのPoCは、一律で同じ検証をする必要はありません。企業の状況や目的によって、必要となる深さや期間が大きく変わります。まずは、自社がどの段階にあるかを見極めることが重要です。大きく分けると、A・B・Cの三つのタイプに分類できます。
Aタイプ
・目的は曖昧だが、とりあえず試したい
・「PoCで目的を明確化する」こと自体が成果になる
・DX推進の一環でロボットを検討している
・課題は言語化しきれていない
・temiで何ができるかまだ掴めていない
Bタイプ
・課題のカタチは見えているが、効果に確信はない
・案内、受付、巡回などで使えそう
・本当に役立つのか、現場が使いこなせるかが不安
・社内プレゼンや投資判断材料が欲しい
・「効果検証・ボトルネック把握」が成果となる
Cタイプ
・導入する前提。最終的に本番運用の形を固めたい
・複数台導入を検討
・運用ルールや社内体制を整備したい
・AI対話(iPresence-Agent)も含めた本番仕様に近づけたい
・「本番想定のPoC」が成果になる
自社がどのタイプに属するかを認識することで、PoCの期間や深さ、投資額が自然と決まっていきます。
4. 自社タイプごとの「推奨PoC期間」
ここでは3タイプごとに、最適なPoC期間を示します。PoCは長ければ良いわけではなく、目的に対して必要十分な期間を設定することが重要です。最小限のコストで最大の判断材料を得るために、temiでは以下の期間を推奨しています。
Aタイプにはまず1週間のPoCが適しています。ロボットの存在感、スタッフや来訪者の反応、遠隔通話の画角や音質、アナウンスの聞こえ方など、初期判断に必要な情報が短期間で揃います。自社にtemiが馴染むかどうかを掴みたい段階では、この1週間が十分な意味を持ちます。さらに一歩踏み込む場合は1ヶ月のPoCが適しています。実際に現場動線を回し、どのように動くか、Wi-Fiとの相性はどうか、SIM併用が必要か、どの業務なら組み合わせられそうかなど、運用イメージがより具体的になります。“現場に置いてみないと見えない課題”の多くがこの期間で抽出されます。
・印象、存在感、基本機能の確認
・実際に動かしてみる/現場動線の相性確認
Bタイプに適しているのは3ヶ月間のPoCです。案内業務、受付業務、巡回サポート、AI対話による案内など、実環境での効果検証が可能になり、スタッフ負担の変化や来客の反応、定量的な成果など、投資判断に必要な材料が揃います。本導入の雰囲気を掴むには、この期間が最もバランスが良いといえます。
・実環境での効果検証
・案内(自動案内/個別案内)
・受付(来客一次対応)
・巡回(遠隔監視/業務サポート)
・AI対話(iPresence-Agent)との併用
・スタッフ負担の変化
・お客様の反応
・定量データ(数値化できる効果)
Cタイプには6ヶ月間のPoCを推奨しています。本番運用に極めて近い環境で、複数台運用のルール作りや、運用マニュアルの整備、AI対話との最適な連携、日常業務化に向けた調整など、導入後のリスクをなくすための検証が行えます。導入後の定着まで意識する段階では、この期間が最も確実です。
・日常業務へ落とし込む/本導入の最終確認
・複数スタッフ間での運用引き継ぎ
・複数台運用のルール確立
・定着に必要な運用マニュアル整備
・AI対話の最適化
・本導入後のKPIシミュレーション
5. PoC支援サービス(オプション)
PoCの成果は、設計力と解析力で大きく変わります。ロボットを現場に置いただけでは本質的な結果は得られません。目的の整理、検証観点の設定、データの取り方などを適切に設計することで、PoCは“判断材料を揃えるための強力なツール”になります。iPresenceでは、企画立案から最終報告書の整理まで、必要に応じて支援を提供しています。PoCの結果が曖昧になりがちな企業でも、具体的で現実的な判断ができるようサポートします。
支援可能な内容(一部のみでの対応も可)
・PoC企画立案(目的、課題、検証観点の整理)
・企画書/PoC計画書の作成サポート
・現場スタッフ向けレクチャー(複数回)
・検証期間中の運用アドバイス
・効果測定(KPI)の設計(定性/定量)
・改善ポイントの可視化
・最終報告書の作成支援

