説明代行ロボットとして進化する「temi(テミ)」

説明業務は、企業活動の中でもっとも労力のかかる領域のひとつだ。来客の受付、商品やサービスの説明、施設内の案内、問い合わせへの応答。そのいずれもが、人の知識と判断を必要とし、かつお客様の体験価値に大きく影響する。しかし、人手不足やスタッフの経験差による説明品質のばらつきなど、現場では多くの課題が積み重なっている。説明の精度が業績に直結する企業も少なくない中で、説明業務を“どう安定化するか”は長年のテーマだった。

こうした流れの中で、“説明代行 ロボット”というキーワードが注目されるようになった。説明業務をロボットに任せるという発想は、かつては未来の話に近かったが、いまは現実的な選択肢として支持されている。その代表例として広く導入が進んでいるのが、自律移動型サービスロボット「temi」である。temiは単なるタブレット端末の置き換えではなく、“動きながら説明することができるロボット”という点に強みがある。指定ルートを巡回し、興味を持ちそうな来客に近づき、画面を通じて正確な説明を届ける。さらに、必要なタイミングで人の接客にシームレスにつなげられるため、スタッフの負荷を最小限に抑えながら説明品質を保てる。

説明代行ロボットとは何か

説明代行ロボットとは、企業に来るお客様に対して情報を提供するためのロボットだが、単に音声で案内をするだけの存在ではない。映像・テキスト・誘導動作・遠隔通話など、説明に必要な複数の手段を組み合わせ、来客の理解を助けることができる。説明業務は、知識の正確性とわかりやすさが求められる領域だ。人員を増やしても説明の質が揃うとは限らず、スタッフごとに温度差が生まれる。説明代行ロボットはこうした課題を解消し、常に均質な説明を維持するための“仕組み化された接客担当”と言える。

temiはその中でも、高い機動性と拡張性を備えている点で支持を得ている。館内を自律的に移動し、「待つ」のではなく「動く説明者」として振る舞えるロボットは多くない。また、タッチパネルと動画を使った説明は正確性が高く、専門的な説明が必要な現場でも導入しやすい。AI対話機能も搭載可能ではあるが、現状ではまだテスト的な位置づけで使われることが多い。むしろ、明確に整理された情報をタッチパネルで提示し、必要な場面では遠隔でスタッフに接続する方式のほうが、説明の精度という観点では評価されている。

なぜ説明代行ロボットが必要とされているのか

説明業務の重要性は、これまで以上に高まっている。理由のひとつは、人手不足が常態化していることだ。来客対応に多くの時間と人員を割けない企業が増え、説明業務に十分なスタッフを配置し続けるのが難しくなっている。また、スタッフごとの説明内容の違いによって、同じ商品やサービスでも“伝わり方”が揃わないという問題もある。説明の質が顧客満足度に直結しやすいため、この課題は決して軽視できない。

説明業務は属人化しやすく、経験豊富なスタッフと新任スタッフでは、説明の表現や深さに大きな差が出る。企業として説明を標準化するためには、ロボットのように“情報を確実に届ける仕組み”が求められる。また、インバウンド需要の増加に伴い、多言語での説明も必要となった。これをすべて人で対応するのは難しく、ロボットによる多言語表示や動画説明は負担軽減に大きく貢献する。

さらに、商品の高度化も大きな背景のひとつだ。近年の製品やサービスは高機能化しており、説明する内容が複雑になりがちだ。来客からの質問に正確に答えるには深い知識が必要で、常に一定の説明品質を保つためには、ロボットによる標準化が有効である。説明代行ロボットの普及はこうした課題が積み重なった結果、自然な流れとして進んでいる。

説明代行ロボットとしてのtemiの特徴

temiは説明業務に必要な機能が揃っている点で扱いやすい。まず大きな特徴は、自律移動による案内だ。固定型の案内端末とは違い、ロボット自身が施設内を移動し、来客に対して適切なタイミングで説明を始めることができる。来客が通る通路で待ち構えたり、展示エリアを巡回することで、説明の機会を逃さない。動く説明者としての動きが、説明業務の効率化を大きく後押しする。

説明内容の正確性を担保するのは、タッチパネルと動画である。AI対話はまだ精度が安定しておらず、正式な説明業務に使うには信頼性が十分とは言えない場面が多い。そのため、正確な情報提供が必要な企業では、タッチパネル上に整理された説明を配置し、動画で理解を促す方式が主流となっている。企業が作った資料をそのまま使えるため、説明内容を常に最新に保てる点も評価されている。

そして、説明ロボットとしてのtemiを特徴づけるのが、遠隔接客の存在である。ロボット単体で説明しきれない質問が来たときに、専門スタッフがそのままロボット越しに応答できる。来客はロボットを通じて人と話しているような感覚を得られ、スタッフは現場にいなくても説明が可能になる。この“ロボットによる一次説明”と“人による最終説明”を組み合わせた方式が、説明品質の安定化に大きく貢献する。

導入による効果

temiを説明代行ロボットとして導入した施設では、説明のムラが減り、来客対応のストレスが大きく減少したという声が多い。説明業務の標準化によって、誰が担当しても同じレベルの説明を提供できるようになる。ロボットが一次対応を担うことで、スタッフはより重要な顧客対応に集中できる。無人時間帯にも案内が可能になるため、施設全体の運営効率も上がる。

来客側からの満足度向上も特徴的である。ロボットが巡回して案内してくれることで、説明を受けたいときにすぐ情報にアクセスできる。タッチパネルの説明は見返しが容易で、動画と組み合わせれば理解が進みやすい。そして、説明が難しい内容は遠隔接客に切り替わるため、必要なときに“人が出てきてくれる安心感”を得られる。

また、多拠点での運営においても、説明内容を統一できる点は企業にとって大きなメリットだ。拠点ごとに説明方法が異なるという問題は、ロボットを中心とした運用で改善できる。説明の記録や来客の反応を蓄積することもでき、改善のサイクルを回しやすい。

活用が進む具体的シーン

工場見学では、決められたルートを巡り、各工程でのポイントを動画とともに説明する方式が利用されている。ショールームでは商品説明をロボットが担当し、スタッフを必要な場面に集中配置できる。店舗では巡回しておすすめ商品を紹介し、必要に応じてスタッフを呼べる仕組みとして機能する。イベントでは、展示内容を動画で説明し、人がカバーしきれない部分を補う役割を果たす。医療施設では案内業務、教育施設では校内説明などにも活用され、説明業務の幅が広がっている。

iPresenceによる運用設計

temiを説明代行ロボットとして機能させるには、ロボットの導入だけでは不十分だ。説明内容をどう配置するか、巡回ルートをどう設定するか、どのタイミングで遠隔接客に接続するかといった運用設計が必要となる。iPresenceでは、ロボット導入後の運用に重点を置き、企業が求める説明品質に合わせたシナリオ設計や動画制作、UI構成の調整を行う。AI対話は補助機能として扱い、実際の説明体験を損なわないように運用全体を設計することに力を入れている。

まとめ

説明業務は企業にとって欠かせないが、同時に負担の大きい領域である。人手不足や説明の属人化、多言語対応の必要性など、現場の課題は複雑化している。説明代行ロボットとしてのtemiは、自律移動、タッチパネル案内、動画説明、遠隔接客といった複数の手段を組み合わせることで、説明の入口を担いながら品質を一定に保つことができる。AI対話は現状ではテスト的・補助的な立ち位置に留めつつ、正確性が求められる部分はロボットとスタッフが分担することで、説明体験が向上する。

説明業務を効率化し、来客満足度を高め、組織内で説明品質を標準化したい企業にとって、temiは現実的で効果の高い選択肢となっている。