東京都が主催し、都政課題とスタートアップとのマッチングを通じて、都内行政現場の課題解決とスタートアップの実証実験や販路拡大のための戦略立案をあわせて支援する「キングサーモンプロジェクト」。これまで5期にわたってスタートアップが採択され、都内行政現場をフィールドに実証実験に取り組んでいる。
東京を出発点に、世界に名を轟かせるユニコーン企業へと成長し、ゆくゆくは東京で後進のスタートアップを育成する存在となる「キングサーモン」企業の輩出を目指す本プロジェクト。どのような企業が、どのようなパートナーと協業して、事業開発に取り組んでいるのだろうか。
そこでTOMORUBAでは、取り組みの事例を紹介していく。第1弾として取り上げるのは、キングサーモンプロジェクトの第5期で採択されたスタートアップ・iPresenceと文京区による取り組みだ。iPresenceが提供するテレプレゼンスアバターロボットを活用した新しい働き方のモデルを確立すべく、2025年1月~2月の約1ヶ月にわたり、実証実験に取り組んだという。そこで得た手応えや成果、今後の展望とは?
iPresenceのChief Brand Officer/営業統括である藤永晴人氏と、協業先である文京区区民部経済課の課長である内宮純一氏のお二人にお話を伺った。
管理職のリモートワーク推進を目指し「擬似テレポート」の実証実験に挑む
――最初に、iPresenceの事業概要をお聞かせください。
iPresence・藤永氏 : iPresenceは、ロボットアバターを通じて離れた場所と人々とリアルタイムコミュニケーションを取る「テレプレゼンスアバターロボット(以下、テレロボット)」を提供しています。テレロボットは、テレビ会議ツールにロボットと遠隔操作が組み合わさったツールと考えていただけると、イメージしやすいかと思います。
iPresenceのコンセプトはTeleportation as a Service。略して、TaaSです。TaaSとは、テレロボットをiPresenceが提供する独自のアプリケーションで操作・管理し、さらにデジタルツインと連携することで、イマーシブルな遠隔地体験を提供します。
つまり、「擬似テレポート」を可能にし、ユーザーがあたかもその場にいるような感覚を与えることで、遠隔地とのコミュニケーションの活性化など、多様な価値を提供するのが私たちのミッションです。現在、製造業、サービス業や観光業のほか、大学・研究機関、教育など、幅広い業種で活用されています。
ただ、一方で「テレロボットの操作や管理に一定のITスキルが求められ、活用に多少のハードルがある」というのが直近の課題でした。そのため、専属の管理者がいない現場での運用方法やカスタマーサクセスなども含めて、サービス提供のスキームを強化するのが、キングサーモンプロジェクトに参画した目的でした。